最終

最近の悩み:アセモ( ^ω^)おいすー

英語Speakingの最終プレゼンは6〜8分しゃべれということなので

それなりの長文を考えなければならない( ´ー`)y-~~

ので、この1週間前からコツコツ準備しようというわけで

色々と情報収集しているとくっそ長い資料になった(´・ω・`)編集する気が…


日本食ブーム
日本食ブームとは、日本以外の諸国・地域において日本食が現地の人々に持て囃される状態を指す。
Japanese Restaurantとはなにか
日本食レストランとは日本以外の諸国・地域において日本食を提供するレストランを指す。
日本国内で日本食レストランという用語が使われることはない。
ここで言うところの日本食とは、日本料理・和食よりも料理の範囲が幅広い概念である。
日本料理や和食という語には「伝統的な」日本料理という意味合いがあるが、日本国外の日本食レストランで提供される料理には、歴史がある伝統的な日本料理ばかりでなく、鉄板焼き、チキンテリヤキ、カレーライス、かつ丼、ラーメンから、カリフォルニアロールを始めとするアメリカ式巻物類にいたるまで、比較的近年になって日本以外の食文化と融合して出来た料理も含まれる。
このため、Japanese restaurantを日本料理店と訳すには違和感があり、自然発生的に日本食レストランという用語が生まれたと思われる。
一方、日本以外の国・地域の文化圏の者から見れば、伝統的とか歴史が浅いとかは重要なことではなく、日本料理も日本食もJapanese cuisine またはJapanese foodである。
寿司が普及するにつれて、他のアジア料理店が店内に寿司バーを設け、〇〇チャイニーズ・レストラン&スシバーとか、コリアン・バーベキュー&スシバーと名乗ったり、シーフード・レストランが寿司や刺身をメニューに入れるケースも見られるようになった。
また、Sushi Siam (Siamはタイの古い名称)とかSushi Saigon など、経営者が堂々と自分の出身地を店名に入れているケースもある。
今や「日本食レストラン」と言っても内容は千差万別で、ボーダーレス時代が到来したと言えよう。
日本食レストランのメニュー
ほとんどの店が寿司を主力メニューにしている。
但し、寿司の注文の八割ほどは米国で考案されたカリフォルニアロールなどの巻物で、日本の伝統的な寿司の一つである握り寿司は二割。
その他のメニューは、テンプラ、チキンやサーモンのテリヤキ、鉄板焼き、焼き鳥、ウドン、ソバ、シャブシャブ、焼肉、ラーメン、カレーライス、和洋折衷の料理(フュージョンと称する)などである。
経緯
1950年代、日本の高度成長が始まるにつれて、世界各地に日本食レストランが出来始めたが、その客層は現地に進出した日本企業の駐在員、日本人旅行者、現地の日系人に限られていた。
1964 年にニューヨークに開店したベニハナ鉄板焼きは、アメリカ人をターゲットに定めて成功し、その模倣店が全米に続出したが、鉄板焼きは本来の日本料理ではないことからブームとは呼ばれなかった。
状況が変化したのは、アメリカ人が健康志向になり、ヘルシーな食生活に関心が高まっていた1976年ごろである。ロサンゼルスでは日本食レストランで寿司を食べることが先端的ライフスタイルとなり、その中心的存在は映画俳優や歌手、弁護士、医者などの高所得者層であった。
そのトレンドはたちまちニューヨークに飛び火し、1980年代初めには全米各地に広まって、マスコミが盛んに取り上げるようになり、寿司ブームと呼ばれるようになった。
寿司ブームとはいっても、アメリカ人が主に食べたのは、アメリカで考案されたカリフォルニアロールなどの巻物(ロール)であり、その傾向は今でも変わっていない。
ブームを加速させたのは、1977年に連邦政府が発表した食生活改善指導(マクガバンレポート)である。財政赤字縮小のために医療費削減が叫ばれ、連邦政府は脂肪分やコレステロールの摂取を減らし、蛋白質や炭水化物を多くとるよう勧めた。
その指導内容はまさに日系人の食生活そのものだったことから、日本食が広く注目されるようになった。
一方、車、カメラ、家電製品など日本のハイテク製品の高品質が評価され、日本製品に対する信頼感が生まれたことも寿司ブームに幸いした。
米国の寿司ブームは1980年代後半に欧州に伝播し、その後中南米、中近東、アジア、豪州などに広がった。
ブームが米国から始まったために、各国とも米国と同様、客の注文は巻物が主体となっている。
寿司店にやってくる人々は、寿司ばかりでなく、そのほかの日本食にも興味を示すようになり、寿司ブームは日本食全般のブームに発展した。
問題点とその是正の動き
海外諸国の日本食レストランの経営者とシェフは現地の人々が大半を占める。かれらは日本の食文化を知らないため、本来の日本食とはかけ離れた料理を提供する傾向がある。また、日本料理の基本的調理技術に欠けるので、料理の質の低下を招き、衛生上の懸念もある。
こうした問題点を是正するため、日本の農林水産省は2006年秋、「海外日本食レストラン認証制度」案を発表し、本来の日本食を提供する店を認証(後に「推奨」と変更)して推奨マークを交付しようとしたが、アメリカの中国系、韓国系経営者の反発に遭い断念した。
そこで、日本食日本食材の普及・啓蒙を主たる事業とすることに方針を変更し、2007年に農林水産省の外郭組織であるNPO日本食レストラン海外普及推進機構」を設立し、海外の主だった都市にその支部を発足させている。
2010年3月
日本貿易振興機構ジェトロ
農林水産部
要旨
ジェトロは今般、米国における日本食レストランの軒数調査を実施した。
2010年の調査結果における全米の日本食レストランの軒数は14,129軒で、これは5年前の2005年(9,182軒)の1.53倍、10年前の2000年(5,988軒)の2.36倍、調査を始めた1992年(3,051軒)の4.63倍であり、近年の全米での日本食レストラン軒数の飛躍的な増加を確認することができる。
州別のランキングをみると、カリフォルニア州が3,963軒で全米の約3割を占めトップ、以下ニューヨーク州フロリダ州ワシントン州ニュージャージー州と東西両岸が上位を占めている。
日本食レストランの軒数は、前述のようにカリフォルニア州ニューヨーク州などで1,000軒を超える一方、100軒未満の州が27も存在するなど、東西両岸を中心とする先進地域とそうでない地域によってかなりばらつきがあることが特徴である。
2008年のリーマンショック以降の足元の日本食レストランの軒数については、日本食関係者の意見を総合すると、不況下でも日本食レストランの軒数はそれほど減っていないことが明らかになった。
また、今後の日本食レストラン軒数の展望については、不況の影響から一時的に日本食レストランは若干減少したとしても、長期的にはまだまだ伸びるとの見方が支配的である。
Ⅰ.米国における日本食レストラン軒数の動向
1.本調査の趣旨と手法
「米国における日本食ブーム」と言われて久しいが、それを裏づける数字となるとなかなか入手することが困難である。
日本からの輸出については、日本の財務省の貿易統計で入手可能であるが、米国における日本食ブームが、すべて日本からの農林水産物の対米輸出に結びついているわけではない。
日本食の普及を測る一つの重要な指標として日本食レストランの軒数が考えられる。
米国内の日本食レストランの軒数については政府などが公表する公式な統計はないが、ロサンゼルスの日本食ビジネス情報誌「Japanese Food Trade News - フード業界情報 U.S.A.」に掲載された調査結果が公表されていた1
そこで、ジェトロは今般、「Japanese Food Trade News - フード業界情報 U.S.A.」から調査手法を引き継いだ「Japanese Restaurant News」の発行元の「All Japan News, Inc.」に委託する形で、米国における日本食レストランの軒数調査を実施することとした。
日本食レストランの軒数は、最初に調査が実施された1992年の3,051軒から大幅な増加を続け、2005年には9,182軒に達した。
しかしながら、米国におけるレストランの軒数調査は、2005年以降実施されておらず、日本食の輸出・普及促進に関する重要な指標として、更新が待たれている状況にあった。
調査の手法については、2005年までの調査手法を踏襲し、米国全州の電話帳などの情報を基に、州別に日本食レストラン軒数を集計する方法をとった2。
なお、本報告書中、1992年、1995年、2000年、2005年の数字については日本食ビジネス情報誌「Japanese Food Trade News-フード業界情報 U.S.A.」に掲載した情報を使用している。
2.全米の日本食レストランは1万4千軒に
2010年度の調査結果における全米の日本食レストランの軒数は14,129軒で、これは5年前の2005年(9,182軒)の1.53倍、10年前の2000年(5,988軒)の2.36倍、調査を始めた1992年(3,051軒)の4.63倍であり、この18年間の全米での日本食レストラン軒数の飛躍的な増加を確認することができる。
州別のランキング(表1)をみると、カリフォルニア州が3,963軒で全米の約3割を占めトップ、以下ニューヨーク州フロリダ州ワシントン州ニュージャージー州と東西両岸が上位を占めている。
2005年からの日本食レストランの軒数の上位州に大きな変動はないが、フロリダ州(4→3位)、ジョージア州(10→8位)と南東部の州が順位を上げていることが特徴的である。
日本食レストランの軒数は、前述のようにカリフォルニア州ニューヨーク州などで1,000軒を超える一方、100軒未満の州が27も存在し、そのうち10軒未満の州も3あるなど、かなり東西両岸を中心とする先進地域とそうでない地域によってばらつきがあることが特徴である。
州別日本食レストラン軒数(表1)
3.日本食レストランの州別動向
表2のとおり州別で調査開始以来、最も日本食レストラン軒数の多いカリフォルニア州は3,963軒で1992年(1,449軒)の2.73倍にあたる。
第2位のニューヨーク州は2010年に1,439軒で1992年(349軒)の4.12倍である。続いて2005年に第4位であったフロリダ州ワシントン州を抜き、941軒(1992年の7.29倍)、ワシントン州は第4位で827軒(1992年の10.09倍)であった。
全体的な特徴としては、まず、ほとんどの州(2州を除くすべての州)で日本食レストランの軒数が増えていることがある。特に、ジョージア州ノースカロライナ州サウスカロライナ州オクラホマ州アーカンソー州の南東部・南部の5州は2005年調査から軒数が2倍以上の大幅増加となっている。このほか、多くの州で2005年調査から軒数が1.5倍以上の増加となるなど、引き続き日本食レストランの軒数が全米で大幅に伸びている傾向がみてとれる。
全米の日本食レストランの軒数は、2005年の9,182軒から、2010年は14,129軒になり、5年間で4,947軒の増加となった。軒数の増加の大きい州をみると、カリフォルニア州が1,067軒の増加でトップ、これにニューヨーク州が601軒、フロリダ州353軒、ニュージャージー州239軒、ワシントン州227軒と続いており、日本食レストランの軒数が上位の州でもまだまだ軒数の増加傾向を続けていることが分かる。カリフォルニア州ニューヨーク州などの日本食の先進州といわれる州においても、日本食レストランはまだまだ飽和状態にないと言えよう。
2010年の州別増加率の特徴としては、2005年調査時には在留邦人および日系米国人(いわゆる「ジャパニーズ」)が多い州で伸び率が低く、そうでない州で伸び率が高いという傾向が見られたが、2010年までの5年間の推移では特にこの傾向は見られず、全体的に全米平均増加率の約1.5倍に近い数字となったことが特徴である。これは2000年から2005年に比べ、2005年から2010年では特にジャパニーズの少ない州における増加率に落ち着きが見られ、日本食ブームから爆発的に需要が高まり急激に増加した日本食レストランに対する需要と供給のバランスが追いつきつつあるためであろう。しかし増加率は緩やかになりつつも、増加傾向に変わりがないというのが業界関係者大半の見方でもある。
カリフォルニア州
レストラン統計データを集計し始めて以来、日本食レストランの多い州はカリフォルニア州ニューヨーク州ワシントン州フロリダ州など、西海岸ならびに東海岸の都市部に集中している。
これらの州には古くから日本からの移民が移り住んだ土地や在留邦人が好んで住む地域が多く、州内の邦人人口が高い傾向にある。
特に一貫してトップの座を独走するカリフォルニア州日本食レストランが多いのには様々な理由があるが、まず日本人移民が最初に移り住んだ米国本土の土地であることが挙げられる。
この地の日本人移民の歴史は130年以上に及び、古くから日常的に日本食が食べられていた背景がある。
そして彼らの子孫である日系人が多く育ったため、日本食を食す人口が増加し日本食レストランへのニーズも本土でいち早く高まった。
実際、 カリフォルニア州は本土における日本食発祥の地でもある。
1885年にチャールズ・カメ•浜田浜之助がロサンゼルス中心部に本土で初めての日本食レストランとなる『カメレストラン』を開店している。
これを契機にロサンゼルス中心部に日本人街「リトル東京」が起こり、全米で日本食レストランが広がる出発点となった。
「Japanese Food Trade News-フード業界情報 U.S.A.」の調査によると米国のすべての州で日本食レストランが開店したのは2003年のことであるが、カリフォルニア州では、その118年前から日本食レストランが存在したことが、同州でとりわけ日本食レストランの軒数が多い背景の一つである。
さらにカリフォルニア州はその後の日本食ブームを作るための重要な役割を果たしてきた。
日系大手食品商社の協力により、『川福レストラン』に全米で初めてとなる寿司カウンターが設置されたのは1962年のことであり、この寿司カウンターの設置が後の寿司ブーム到来に重要な役割を果たすこととなった。
邦人人口の多さに加えて、「スシ」という当時としては異色な食べ物を食べてみようと考える米国の流行を作り出すハリウッド関係者や有名人などが多く居住する地域であったのもカリフォルニア州日本食が爆発的に成長する背景となった。
加えて、日本との距離の近さも重要である。
移民が最初に渡った土地である理由は、物理的に米国本土内で日本から最も近い土地柄であることが理由の一つであるが、その後日系企業が米国への進出する際にも、ロサンゼルスやサンフランシスコは多くの米国進出を目指す企業の窓口都市となった。
そして企業で働く駐在員やその家族が移り住んだため、日本食材への需要が急速に伸びた。
同時に多くの日本食品関連企業の進出先ともなったため、米、魚、野菜、飲料、日本酒などの日本食材が他州よりも早い時期に提供された。
また、全米に先駆けて健康ブームが起こった土地柄であり、健康志向が広がっていたため、日本食材を受け入れる土壌もあった。
さらには日本人以外のアジア人人口が多い土地であることも日本食ブームの追い風として挙げられる。
後述のとおり日本食レストランの経営者の大半は日本人以外のアジア人であることが多い。
カリフォルニア州はもともとアジア人移民の人口が多く、また日本人以外のアジア人の人口増加率も他州に比べ、格段に高い。
そのため新しくレストランをオープンする際に日本食を選ぶオーナー層が厚かったことも理由の一つである。
なお、カリフォルニア州日本食レストラン3,963軒を州内の土地別に分けると北カリフォルニア1,357軒(中核都市はサンフランシスコ)、中部カリフォルニア178軒(中核都市はフレズノ)、南カリフォルニア2,428軒(中核都市はロサンゼルス)となっており、特にロサンゼルスをはじめとする南カリフォルニア日本食レストランの比重が偏っている傾向にある。
ニューヨーク州
第2位のニューヨーク州日本食レストランは、ニューヨーク市およびその近郊に集中している。ニューヨークにある日本食レストラン数1,439軒の内訳はマンハッタン624軒、ブルックリン112軒となっている。ニューヨークは邦人人口数がトップであるが、日本食レストランの半分近くが都市中心部であるマンハッタン地区に密集しているのが特徴である。そのためか、ロサンゼルスでは日本人が行く日本食レストランと米国人の行く日本食レストランに隔たりが感じられる部分があるが、マンハッタン地区で人気のある日本食レストランには米国人客と日本人客が混じり合っている印象がある。後述の通り、日本人移民人口が減少傾向にある中、米国人向けを中心として今後もニューヨーク州日本食レストラン数は増加する可能性が高い。
フロリダ州
2005年に第3位であったワシントン州を抜いて、2010年の第3位に躍進したのがフロリダ州である。
ネバダ州のラスベガスと並ぶ観光都市を有するフロリダ州日本食レストランが増加している理由の一つに、南部・南東部地方で起こっている「トレンディな日本食」のイメージが牽引力であることが挙げられる。
ワシントン州
第4位のワシントン州は、カリフォルニア州と同様に日本からの距離の近さを背景として日本食レストランが多く立地している。
また、太平洋に面しており、漁場の近さも寿司人気に拍車をかけている。
ワシントン州ではカリフォルニア州などで不衛生的という見方からあまり受け入れられていない回転寿司も多く見られ、他都市に比べると比較的日本食が米国人の日常に大衆的に溶け込んでいる。
このため、他の都市部とは違う独自の日本食文化の浸透がみられ、独自のブームが起こる可能性もある。
<その他の州>
第5位のニュージャージー州は第2位のニューヨーク州と隣接しており、ニューヨーク周辺での日本食人気が伺える。
2010年の上位10州を見ると6位のテキサス州、10位のイリノイ州を除き、全ての州が西海岸か東海岸の海沿いの州である。
海沿いに都市が多いこともあるが、今後も日本食レストランは太平洋、大西洋の両海岸沿いから中央部へ浸透して行く傾向に変化はないと考えられる。
2010年における州別の日本食レストラン数が少ない州を下から順に挙げるとサウスダコタ州(3軒)、ワイオミング州(4軒)ノースダコタ州(5軒)、バーモント州(10軒)、ウェストバージニア州(17軒)となる。
この下位5州は2005年から変化がない。
これらの州で日本食レストランが少ない背景の一つには、そもそも州で初めての日本食レストラン開店が他州と比べて遅かったことが挙げられる。
ワイオミング州で1995年、サウスダコダ州で2000年、ノースダコタ州で2003年と、トップのカリフォルニア州と比較すれば100年以上の開きがある。
このため、日本食文化が州内で浸透して行くには今しばらく時間がかかると考えられる。
(表2)日本食レストラン軒数の州別推移
4.下位州の日本食レストラン急増は一段落
回2005年の調査までは、ジャパニーズ人口の比較的少ない下位の州において、日本食レストランの軒数が大幅に増加する傾向がみられた。
この傾向が、現在も続いているかについて、上位10州と上位10州以外における日本食レストランの軒数を基に分析する。
統計データの残る1992年からそれぞれ5年比増加率の推移は表3のとおりである。
直近の2005年から2010年の5年増加率は全米合計で53.88%、上位10州で51.38%、上位10州以外で59.96%と2005年に比べて上位州とその他の州との増加率の差が縮まっている。
上位10州の増加率が比較的安定しているのに比べて上位10州以外の急激な増加率が一段落しつつある状況に見える。
(表3)上位10州とそれ以外の州の増加率の推移
5.日本食レストランの地域別動向
全米の51州を、西部太平洋、西部内陸、中西部、南部、北東部、南東部の6つの地域に分けて(図1参照)、日本食レストランの軒数を見たのが表4である。
それぞれの地域別に、日本食レストランの軒数の傾向を分析する。
図1−米国6地域別地図(51州)
<西部太平洋地域(カリフォルニア州ワシントン州ハワイ州オレゴン州アラスカ州の5州)>
カリフォルニア州を含むこの地域は、全米の中でも最初に日本食が広まった地域で、いわば日本食の先進地域ということができる。
2010年の日本食レストランの軒数の州別順位をみても、1位カリフォルニア州、4位ワシントン州、7位ハワイ州、13位オレゴン州と上位を占めており、いかに西部太平洋地域が日本食の先進地域であるかがみてとれる。
西部太平洋地域の日本食レストランの増加率をみると、調査開始以来、5年間で30%台の増加ペースを持続している。
2005年から2010年の日本食レストランの軒数の増加率が、他地域と比べて低くはなっているが、軒数をみると1,502軒の増加となっており、まだまだ飽和状態ではなく伸び続けていることが分かる。
<西部内陸地域(アリゾナ州コロラド州ネバダ州、ユタ州ニューメキシコ州アイダホ州モンタナ州ワイオミング州の8州)>
この地域は、それほど日本食が普及している地域ではないが、コロラド州日本食先進州のカリフォルニア州との結びつきの強いアリゾナ州ネバダ州で200軒を超える日本食レストランが立地している。
逆に北部のアイダホ州モンタナ州ワイオミング州は、日本食レストランが非常に少ないと言える。
2005年からの日本食レストランの軒数の伸びは51.7%であり、全米平均レベルの伸び率となっている。
<中西部(イリノイ州オハイオ州ミシガン州ミズーリ州インディアナ州ウィスコンシン州ミネソタ州カンザス州、アイオワ州ネブラスカ州ノースダコタ州サウスダコタ州の12州>
中西部は、全米第3位の都市のシカゴを抱えるイリノイ州で2010年調査の日本食レストランが377軒となっているが、その他の11州は日本食レストランの軒数も200軒以下で州別順位も20位以下となっており、全体的に日本食がそれほど普及していない姿がうかがえる。
2000年から2005年にかけて、日本食レストランの軒数の伸びが96.0%と著しい増加がみられたが、需要に供給のバランスが追いつき始めたためか、2005年から2010年の伸び率は52.0%でほぼ全米平均レベルとなっている。
<南部(テキサス州テネシー州ルイジアナ州アラバマ州ケンタッキー州オクラホマ州アーカンソー州ミシシッピ州の8州>
南部は、過去にはそれほど日本食レストランの集積がなかったが、近年大幅に増加している地域である。テキサス州日本食レストランは500軒に迫り全米6位となっているほか、テネシー州203軒、ルイジアナ州96軒と続いている。
この地域の特徴は、1995〜2000年が96.7%、2000〜2005年が67.5%、2005〜2010年が74.9%と、日本食レストランの軒数が急速に伸びていることである。
現在、業界関係者の注目は南部・南東部地域に向けられており、今後日本食レストランが増加する地域として注目されている。
<北東部(ニューヨーク州ニュージャージー州マサチューセッツ州ペンシルバニア州コネチカット州ニューハンプシャー州ロードアイランド州メイン州バーモント州の9州>
ニューヨーク、ボストンなどの大都市を抱える北東部は、西海岸に次いで日本食レストランが集積している地域であり、日本食レストランの軒数は地域全体で2,810軒を数える。
その中でも、ニューヨーク周辺地域は日本食の一大集積地であり、ニューヨーク州と隣接するニュージャージー州を合わせた日本食レストランの軒数は2,000軒に迫る。
このほか、フィラデルフィアを抱えるペンシルバニア州やボストンを抱えるマサチューセッツ州でも日本食レストランの軒数が200軒を超えている。
近年の日本食レストランの軒数の増加率をみると、2000〜2005年が71.5%、2005〜2010年が72.6%と高い伸び率を続けていることが特徴である。
この背景には、全米第2位の日本食レストランの集積を誇るニューヨーク州における軒数が高い伸びを続けていることがある。
Ⅲ章においてニューヨークの日本食レストラン事情を紹介するが、新たな日本食ブームや食品企業進出により、特にマンハッタンの日本食レストランは増加傾向にあるほか、周辺地域の日本食レストランの軒数の増加率も高く、今後も日本食レストランの増加が期待される。
<南東部(フロリダ州ジョージア州ノースカロライナ州バージニア州メリーランド州サウスカロライナ州、ワシントンDC、デラウェア州ウェストバージニア州の9州>
この地域は、過去にはそれほど日本食レストランの集積がなかったが、近年大幅に日本食レストランが増加している地域である。
2010年の日本食レストランの軒数の州別順位をみると、3位フロリダ州、8位ジョージア州、9位ノースカロライナ州と10位以内に3州が入っており、日本食レストランの軒数の地域合計も2,500を超え、西海岸、北東部に次ぐ一大集積地域となっている。
また、近年の日本食レストランの軒数の増加をみても、1995〜2000年が86.8%、2000〜2005年が75.6%、2005〜2010年が72.6%と大幅な伸びを続けており、南部とともに業界関係者の注目を集める地域となっている。
(表4)日本食レストランの地域別増加状況
Ⅱ.経済不況の日本食レストランへの影響
1.不況でも日本食レストランの軒数は減少せず
2008年のリーマンショック以降、レストラン業界を取り巻く環境は厳しい。
もちろん、日本食レストランも例外ではなく、大多数の店で売上げや客数が減少し、厳しい経営状況で閉店に追い込まれる店舗も少なくない。
第Ⅰ章では、2005〜2010年のレストランの軒数調査の結果に基づき、日本食レストランの動向を分析したが、2008年のリーマンショック以降の足元の日本食レストランの軒数はどうであろうか。
本章では、ロサンゼルスで活躍する日本食関係者からの情報などを基に日本食レストランの足元の動向や展望について触れる。
まず、日本食レストランの軒数についてロサンゼルスの日本食関係者に聞いたところ、リーマンショックのあった2008年後半以降も「若干減っているかもしれないがそれほど大きな変化はない」、「日本食レストランは数的には増えているのではないか」、「一部店を閉めているところもあるが、大きくは減っていない」、「2007年までほどには増えていないが、微増はしているのではないか」との声が聞かれた。
それぞれのコメントに若干の違いはあるものの、全体としては、不況下でも日本食レストランの軒数はそれほど減っていない姿が明らかになった。
日本食レストランの種類別にみると、大型都市の高級店や日本人・日系人を顧客にしている店は、特に厳しいとの声が聞かれた。
また、不況の影響からオーナーが代わるところが多く日本人オーナーから韓国人・中国人オーナーに代わる動きおよび廃業した個人経営の店を引き継ぐことにより店舗数を増やす動きなどが指摘された。
また、今後の日本食レストラン軒数の展望については、不況の影響から一時的に日本食レストランは若干減少したとしても、長期的にはまだまだ伸びるとの見方が支配的である。
日本食ブームと好況のおかげで営業ができていたレストランは、不況で財布のひもが固くなった消費者の足が遠ざかり、閉店に追い込まれる店もある。
しかしながら、不況の中でも日本食人気が衰えたわけではなく、不況下で新たな開店を見合わせるオーナーが多いとしても、都心部の本物志向の店や時代の要請にあった日本食レストランは減少せず、ここ1〜2年で都市部の日本食レストラン軒数は一時的に減少する可能性はあるが、経済の回復に従って、再び増加傾向に戻るとの見方が大半である。
また、東西両岸の都市部を除いた中西部や南部・南東部では、日本食レストランはまだこの成長段階ではないため、経済全体の不況の影響をさほど受けずに日本食レストラン軒数の増加傾向は続くと考えられる。
2.日本食レストランにも不況の影響
経済不況の中、日本食レストランの軒数はそれほど減少していないが、消費者の外食を控える傾向や単価を落とす節約傾向により、多くの日本食レストランで売上げが減少している。
人気のある高級店では客数に変化は少ないが、節約傾向にある客が値段の高い酒や料理を注文しなくなり、全体の売上げが減少傾向にある。
反対に、価格を押さえたカジュアル店や特色のあるレストランでは客数を伸ばしている店もあるが、これまで好景気のおかげで何とか営業してきたような店は淘汰されつつある。
特に日本食文化の背景や基礎を持たずに好況下で経営を拡大した日本食レストランは、不況のあおりを受け、客足が遠のき閉店する店舗も出ている。
不況により消費を抑えるため、外食率の著しい減少が見られ、これはレストラン業界全体へ打撃を与えているが、日本食レストランは他の分野のレストランに比較するとまだ打撃が少ないと言われている。
これは、健康ブームや食への安全が注目される中、日本食に「ヘルシー」「美味しい」「安全」というポジティブな印象が持たれているからである。
しかし、この日本食に対する好印象はまだ普遍的なものとは言い難いのが現状である。
このため、コスト削減に走り過ぎれば、根付き始めた日本食のポジティブな印象が無に帰する可能性も危惧されており、消費者の日本食に対する信頼を失わないようにすることが重要である。
美味しい日本食を提供するためにある程度のグレードを保つことは必須条件でもあるが、不況下で日本食に理解の薄いオーナーが経営するレストランが品質を落としているとの話もある。
このような日本食の品質の低下が進むと、「ヘルシー」「美味しい」「安全」という日本食の全体のイメージが崩れることが懸念される。
Ⅲ.日本食レストランの都市別動向
1.最近の日本食レストランの流れ
第Ⅰ章では、日本食レストランの軒数調査のデータに基づき、州別・地域別に日本食レストラン動向を分析した。
本章では、データの数字の背景を補完する観点から、最近の日本食レストランの大きな流れに加えて、東西両岸の主要都市(ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク)における日本食レストランの動向を紹介する。
最近5年間の日本食レストランの動向としては、2つの大きな流れがみられる。
一つ目は日本のレストラン業界からの米国市場参入である。
日本のレストラン業界の厳しい状況と円高が後押しし、日本からの参入企業の成功例が目立つ。
日本のレストラングループや企業の米国進出は従来も見られたが、従来は日本式のサービスや料理、マーケティング方法をそのまま米国市場に適用し、参入に失敗、赤字や閉店に追い込まれた店が少なくなかった。
これに対して近年の日本のレストラン業界からの参入の成功事例をみると、過去の日本からの進出や特に不成功例から学習し、まず米国人顧客へのマーケティング方法が研究されているようだ。
料理やサービス法についても日本の良さを取り入れながらも、米国人顧客のニーズをしっかりつかみ、日本人よりもむしろ米国人顧客をベースにブームを作り出しているのである。
当然のことながら、米国では日本人をターゲットにするより、米国人をターゲットにして成功した方が人口的にも爆発的に伸びる可能性を秘めている。
このため、米国人顧客のニーズをつかんだ近年の進出例に成功が多いのではないだろうか。
また、これらの日本からの参入には、従来は日本から距離の近い西海岸やハワイから店舗展開していく傾向が強かったが、近年はニューヨークを中心とした東海岸の都市へ直接出店していく傾向が見られる。
もう一つの大きな流れは、日本食レストランの現地化である。
日本食レストラン文化発祥の地であるロサンゼルスやニューヨーク、サンフランシスコ、ハワイなどの都市部から地方へ流れていくこれまでの傾向から、近年ではこれまで比較的日本食レストランが少なく、日本食文化の浸透が遅れていた南部・南東部地域を中心に、西•東海岸の都市部とは異なった日本食ブームが台頭して来ている。
これらの地域では米国人オーナーによる経営で「トレンディ」、「ファッショナブル」な形容詞のもと寿司や巻物などを中心とした日本食を提供している。
従来と違い、現地の米国人による米国人のための店なのである。
この日本食レストランの現地化により、これまでなかったマーケットへ日本食が広がっていくことは、米国でのより一層の日本食浸透、普及の流れを作り出しているといえる。
10年前の日本食ブームはロサンゼルスを中心とする西海岸からニューヨークを中心とする東海岸、そして中西部、南部・南東部へと波及して行くのが定番であったが、今後、ニューヨークや南部・南東部なども新たなブーム発信地となり、米国の日本食ビジネスに活気をもたらすことが期待される。
2.主要都市の日本食レストラン動向
<ロサンゼルス>
古くから日系移民や日系人の多く住むロサンゼルスを中心とした南カリフォルニアは全米最大の日本食レストラン軒数を誇る。
流行に敏感な映画関係者が集まるハリウッドがあり、物理的に日本からの距離が近いため、日本食や食材の玄関口として日本食文化が栄える土壌があった。
あらゆる種類の日本食レストランがあり、寿司ブームや酒ブームなど、米国での日本食文化発展の契機となったブームを作り出したロサンゼルスは、長年日本食ブームの独占的な牽引役を果たしてきた。
近年、ニューヨークや南部・南東部での独自の日本食ブームの流れの起こりから、米国での日本食ブームが必ずしもロサンゼルスを経由するとは言えなくなったが、未だに日本食レストラン軒数では群を抜いており、新たなブームの発信地の一つとして、日本食レストランを語るのに重要な地であることに変わりはない。
2009年度の『ザガット/ロサンゼルス』では上位100位のうち30店舗に日本食レストランが並ぶなど、ロサンゼルスでの日本食レストランの地位は高い。
また、大衆層の客層が厚いので、居酒屋スタイルは定着しつつあり、成功店も多く見られる。
しかし、一方でニューヨークに比べるとハイエンドの客層が薄いこともあり、ニューヨークで流行しているような高級寿司店や高級日本食店が比較的伸びにくい傾向が指摘されている。
<サンフランシスコ>
カリフォルニアの代表的な都市、サンフランシスコを中心とする地域、特にベイエリアではロサンゼルス同様、古くから日本食が根付いている。
寿司や天ぷらなどを第1世代とすると、過去5年間を振り返ると、この地では既に日本食の第3世代を迎えている。
カジュアルなデリ風の日本食からトップクラスのフレンチやアメリカン•レストランに対抗できるハイエンドな日本食レストランが増えてきている。
その種類は会席、割烹からラーメン、居酒屋と、ある程度日本食に対する知識を持ったグルメな米国人たちを満足させる品揃えの豊富さと本格派の店が多い。
その一方、米国人を対象としたしゃぶしゃぶ店も増え、根強い人気をみせる。
また、日本酒の知識がある米国人が増え、冷酒を注文する客が多くなってきている。
多くのレストランで特に高級酒を中心に揃え、大吟醸吟醸、純米をそれぞれ一グラスずつ味わえる「酒フライト」を提供している店も多く、これによって自分の好みの酒が少しずつ分かるようになってきたという声も多く聞かれる。
そういったレストランでは酒ソムリエを常駐させている店も増えてきており、客の日本酒に対する関心に応えることのできる体制が整っているレストランもみられる。
サンフランシスコを中心とするベイエリアに住んでいるほとんどの米国人が寿司を経験しており、常に新しい日本食を求める傾向がある。
米国系のスーパーにも豆腐や味噌などの日本食材や日本酒などが増え、わざわざアジア系マーケットに出向かずとも、近所で購入できるようになったためか、家庭で日本食を楽しむ米国人が比較的多いのもこの地域の特徴である。
イベントやワークショップなどの多さもこの傾向を後押ししている。
また、日本食レストランの顧客層が労働者階級から上級階級まで幅広いのがこの地域の特徴でもある。
そのせいか、この5年間でベイエリアにおける居酒屋は20軒以上増えている。居酒屋とともにブームになりつつあるのがラーメンである。
サンフランシスコではラーメン店は日本人オーナーだけでなく、各種国籍の様々なオーナーが運営して、そのブームを支えている。
米国人経営のモダンでお洒落なバーを持つ寿司バーなども依然として若者層の支持を集めている。
日本食のデリやケータリングにも注目が集まり、屋台風の新しいストリート・フードのような形態の日本食も出現してきている。
また、サンフランシスコにあるアメリカ料理やカリフォルニア料理のトップレストランでは、前菜に寿司を提供しているところも多い。
それらのレストランの中でも、さらに寿司カウンターを備えたレストランに人気がある。
日本食の歴史が長いサンフランシスコでは寿司などの日本食が他の地域に比べ、他の分野の料理にまでいち早く溶け込んでいる傾向にある。
また、サンフランシスコ国際空港は雑誌やテレビの番組から「米国で一番グルメな空港」に選ばれたが、国内線、国際線の両ターミナルには多数の日本食レストランが進出しており、これらの売上げは増加傾向にある
<ニューヨーク>
日本食レストラン数、提供している料理の種類、分野の多さで他の都市に圧倒的な差をつけているロサンゼルスとともに、近年最も注目されている都市がニューヨークである。
前述のとおり、これまではロサンゼルスを経由し、ロサンゼルスから全米へ発信される傾向にあった日本食ブームや日本食関係企業が、直接ニューヨークから発信され始めているケースも見られるようになってきている。
例えば、一人当たりの客単価が日本人のラーメン店への感覚からすると安くないラーメン店が成功している例もみられる。
日本の有名ラーメンチェーンの米国への初進出および活躍に続き、ニューヨークでは新しいラーメン店が登場して、その何店かは人気店として不況知らずの成功店となっている。
不況で外食を控える人でもたまには外食を楽しみたい、ランチとしては高価な価格帯だがディナーとしては手頃、それでいて高級感を演出する店内とサービスに満足感を得られるという不況時代を生き残る一つの成功モデルとも考えられる。
日本からの参入企業の成否を分けるのは徹底した現地客の好みに合った味、サービス、マーケティングである。
日本でのやり方や料理を日本式に提供している店は閉店に追い込まれているケースが少なくないが、高級店では例外もある。
顧客の選択が厳しくなった現在、日本からの参入、現地発を問わず最上級の料理と質の高いサービスを備えたこだわりの店、または比較的低価格でラーメン、蕎麦、焼鳥、炉端焼きなど専門化した大衆店のみが生き残りつつある。
ニューヨークには不況時にも購買力の高いミドルアッパー層が厚いため、質の良い料理とサービスを提供する本物志向、高級志向のレストランの人気が根強い。
これらの高級店ではデザートの注文を止めたり、比較的安い値段のワインを選択したりと客単価は減少しているが、来客数には大きな減少は見られないとの話もある。
また、店内売上げの減少分をテイクアウトやデリバリーの売上げ増加で補填している店も見られる。
かつての日本食レストランは、寿司をメインに、天ぷら、すき焼きなど代表的な和食を取り揃えていたが、ここ数年で、おにぎり、焼き鳥、炉端焼き、とんかつ、日本スタイルの焼き肉、うどんなど、各分野に特化した日本食の専門店が続々開店した。
長引く不況の影響か、低価格でカジュアルなレストランに人気が集まっている。
既に若い世代のニューヨーカーたちにとって、日本食は小さい時から親しんでいる食のひとつである。
幼少時から寿司や天ぷらなどに親しんでいる米国人にとって、もう一歩踏み込んだ日本食であるラーメン、蕎麦、日本酒、炉端焼き、居酒屋などが、とても興味深く受け入れられる下地ができており、そのことからも今後ニューヨークではカジュアル、低価格の日本食の専門店が増加していくことが予想される。
これに反して、概して不況の影響が大きいのは大型高級店である。
これらの大型高級店は200〜300人規模で、外食人口が減っている不況時にはそれだけも打撃が大きい。
これらの日本食レストランは、2000年代初めのジャパニーズ・フュージョンの流行に合わせたフュージョン系のオリジナル料理を提供する店が多く、高級感の漂う豪奢な内装や外装、贅を尽くした料理やサービスを提供することで人気を博し、ニューヨークでも増加したが、不況時のニーズに合わず厳しい経営状況に陥り、閉店に追い込まれている店舗も出ている。
不況になると顧客の要求はとても厳しくなり、お得感のある値段で、美味しく、気張らずにいけて、かっこよく、ちょっと贅沢な気持ちにもなれるようなところや目新しいコンセプトの店、さらに時代の流れにあった、今の顧客の求めるものを提供し続ける努力をして、固定客をしっかり持っているところだけが、生き残っていけるのだろう。
その他、ヘルシー志向の強いニューヨーカーには単に低カロリー・低脂肪という日本食全体に共通する特徴だけでなく、日本食材のさらに深い健康効果を活かした料理を提供している店に比較的安定した人気がある。
精進料理に加え、「マクロビオティック」、「ヴィーガン(動物性食品を一切使わない料理)」、「日本茶」など、日本食のヘルシーなイメージを突き詰めたコンセプトの店に評判が集まる。
Ⅳ.日本食材の現状と展望
1.日本食材の普及
日本料理の地位向上に合わせて、日本食材の認知度も向上している。
ロサンゼルスやニューヨークなどの多くの高級レストランでは日本食の食材や料理法を取り入れたメニューが並ぶ。
日本産の高級牛肉やゆず、わさびなどの薬味類をいわゆるフュージョン料理だけでなく、本格的なフレンチやイタリアンに取り入れ、新しい料理を作り出しているのだ。
高級レストランから始まった傾向だが、カジュアルなレストランやカフェのメニュー表記に「Shiitake(しいたけ)」や「Shimeji(しめじ)」などが直接表記されているケースも珍しくない。
また、日本食のヘルシーで人気があるイメージから、日本食を取り入れたメニューを提供することで集客を狙う店もある。ヘルシー志向の強い西海岸の都市部で特にこの傾向が認められる。
レストランではないが、米国系グロッサリーやスーパーにも、日本食材の普及は進む。
醤油などの調味料は既に全米のスーパーに必ず取り扱われていると言っても過言ではないが、それに加え、水菜や小松菜などの野菜類や松坂牛などの高級牛肉等がアジア系ではない米国系スーパーや素材にこだわるオーガニック系のスーパーで販売され始めている。
特に日本の高級牛肉は「Wagyu(和牛)」ブランドとしてその地位を確立しつつある。
2.主な日本食材の現状と展望
以下では、日本食レストランでも提供される海苔、日本酒、焼酎、日本茶の4品目の現状と将来の可能性について考察する。
<海苔>
「Japanese Food Business Data Bank 2009」の独自調査によれば、大手4大海苔メーカー(浦島、白子のり、高岡屋、山本山)の米国での合計売上高は2003年度の2,278万ドルから2007年度には3,503万ドルとなり、1.5倍以上の伸びをみせた。
財務省の貿易統計でも海苔の輸出量は2003年には50,968kgだったのが、2009年には154,783kgと3倍以上に増加している。
主要メーカーの米国内生産率は7〜8割に達すると言われており、貿易統計の対米輸出額の増加以上に成長を遂げていることがわかる。
海苔の大きな需要はやはり、寿司を中心とした日本食レストランで、ぱりっとした食感が美味しい手巻き寿司などの人気も高まり、黒い海苔を嫌う米国人の傾向も大分薄らいでいると言えるのではないだろうか。
また、学校のカフェテリアや大手米系スーパーなどでも巻き寿司が取り扱われるようになり、寿司の多様化とともに海苔の需要は今後も増加していく傾向にあると予想される。
<日本酒>
日本国内での市場の低迷に反して、米国ではこの10年間における日本酒の売上増加は著しく、日本食の浸透に伴い日本酒の消費量も増加の一途をたどった。
従来は、日系食品商社が輸入•販売を一手に担っていたが、近年の傾向として、米系の輸入会社や販売会社の参入が認められる。
米国での酒類販売には各州それぞれのホールセール•ライセンスが必要となるため、大手日系食品商社では各州で米系の販売会社と提携を結んでいる。
加えて、日本での滞在経験を通じて食文化に触れた若者たちが米国へ戻って日本食文化や日本酒について雑誌やブログ、本などで情報発信し、米国人が米国人へ日本食について教え、販売する土壌が育まれつつある。
これは日本酒市場の将来へ展望に明るい見通しを与えている。
日本食ブームの初期、日本酒は「日本食レストランで日本の料理とともに供される温かく珍しいアルコール飲料」、つまり燗酒としてレストランでのみ楽しまれる存在であった。
当時はまだ米国人家庭での食生活に日本酒は登場しておらず、日本食レストランでのみ楽しむことができる飲み物であった。
その後、高級日本食レストランの台頭、メディアや輸入企業による日本酒についての啓蒙活動、各地で酒イベントを開催した結果、地酒や高級酒の知名度が上がり、米系高級スーパーやオーガニック・スーパーなどでも販売されるようになり、個人市場への消費拡大へ貢献した。
日本酒の中でも米国では特に高級酒への需要が高まっている。
財務省の貿易統計の対米輸出実績を見れば、1999年と2008年の輸出高の数量ベース(リットル単位)で約2.5倍の増加率だが、これを価格ベースで見た場合、約3.8倍となり、数量に対して価格の伸びが著しいことが分かる。
つまり、単価の高い高級酒の需要が高まっている傾向がみてとれる。
ただし、日本酒の人気については輸出実績だけでは語れない。
なぜなら現在米国へ進出している多くの大手清酒メーカーは米国に流通する製品の相当部分を既に米国での現地生産でまかなっているためだ。
さらに、一部企業では、今後工場増設など米国での増産体制を整える動きもある。
このため、実際に米国で消費されている日本酒の量は日本からの輸出量を大幅に上回っていると推測される。
長年米国の日本食業界に携わってきた酒ソムリエによると、寿司に例えれば、5年前にカリフォルニアロールだけを食べていた客が、コハダや味などの光り物を口にする時代、つまり、酒カクテルやフレーバー酒しか飲まなかった客が、いろいろな銘柄や飲み方に挑戦する時代にシフトしているという。
寿司の前例からみれば、まさに本格派日本酒時代の幕開けである。
しかしながら、今後の課題も大きい。
国内市場での市場縮小から海外での市場拡大を試みた日本酒メーカーは多く、短期間にあまりにも多くの種類の日本酒が米国市場へ投入されたが、等級や種別、表記などの統一がされていないため、消費者の混乱を招いている。
日本酒はワインと比較されることが多いが、例えばフランスやイタリアではワインの等級や表記法について、厳しいルールが定められており、ラベルに規定以外の表記をすることは許されない。
また、葡萄の品種ごとに特徴があり、消費者は好みのワインや料理との食べ合わせを選びやすい。
さらに、ワインを説明するためのソムリエ資格も資格認定のための試験、試験受講のための業務経験年数など国際的な厳格な資格規定が設けられており、高級レストランには知識と経験を兼ね備えた優秀なソムリエ・スタッフが従事し、顧客の希望に沿った料理と相性の良いワインについてアドバイスができる態勢にある。
これに対して、日本酒の状況をみると、日本酒のラベルの表記法には日本国内でも統一されたルールが存在しておらず、各メーカーによって、「特級」「特選」「一級」「金印」などそれぞれ異なるラベルを自由に貼り付けることができる。
このことは、日本酒文化の歴史が浅い米国の消費者には自分の好みを見つけにくく、日本酒を難解なよくわからない飲み物にしてしまう原因になる。
日本酒を数多く置いているレストランでは「大吟醸」「吟醸酒」「純米酒」「本醸造」などの区別がされているが、これはあくまで少数派であり、全く表記がなされず「SAKE」のひとくくりにされている店が大半である。
これでは一般のレストラン客が好みの「SAKE」を探す手がかりが得られず、日本酒とはこういう飲み物でこういう時に楽しみたいとのイメージが湧きにくい。
さらにワインと違い、味や飲み方の違い、料理とのペアリングを説明できるスタッフを常駐させているレストランはほとんど皆無と言っていい。
これは米国在住の、英語できちんと日本酒について説明のできる日本酒きき酒師がほとんどいないためでもある。
米国以外でもここ10年の間、世界中で日本酒の地位が高まるなか、日本酒きき酒師がワインのソムリエのように認知されれば、今後、日本酒文化を米国や世界でさらに浸透させ、日本酒好きの米国人の数を増やし、ワインと同様に「あの日本食レストランで飲んだXX酒のような酒が楽しみたい」、「この前飲んだ○○酒とは趣向を変えた日本酒が飲みたい」、「この料理には冷たく冷やした△△酒が飲みたい」という消費者のニーズ発掘に貢献する可能性がある。
そしてこれらの日本酒きき酒師を日本酒レストランに常駐させ、日本酒と料理のペアリングをアドバイスできるようになれば、日本酒の地位とニーズはさらに高まり、消費拡大に繋がるのではないだろうか。
10年間で急速に米国に多くの種類の日本酒が氾濫した今、米国人に分かりやすく統一されたラベルときき酒師などのレストランにおいて日本酒を説明できるスタッフの育成が課題となっている。
<焼酎>
日本国内では2004年に約50年ぶりに日本酒の売上高を抜き、今や日本の「国酒」とも言われるようになった焼酎だが、業界関係者の多くが明るい展望を持ち、成長率の著しい日本酒に対して、米国での普及への道は厳しい見方をする関係者が多い。
実際ここ数年、米国における焼酎の売上げは低迷している。
その理由としてまず挙げられるのが、従来のターゲットとなる顧客層であった米国在住の日本人人口の伸び悩みである。
焼酎市場はもともと駐在員などの在米日本人を対象としており、対象とする顧客層が変わらない限り、在米日本人数がその市場の上限となってしまうのである。
日本の酒造メーカーは、米国での流通・販売を専門としている企業に販売を一任している場合も多いが、実際のところ日系大手食品商社では各社10,000点以上の食材、雑貨を取り扱っており、セールスマン一人一人に一点一点の商品に対する教育を行き届かせるには時間を要するのが現状である。
セールスマン本人が焼酎好きでもなければ、膨大な数の商品の中から特に焼酎に力を入れて営業をすることも考え難い。
日本人セールスマンであれば、焼酎の良さを伝えるのに問題はないが、米国人のセールスマンの場合、本人がまず焼酎を知る必要があり、その上での営業となる。
そして広告を出す際にも、たとえば日本語のみで広告を出した場合、在米日本人数は減少傾向にあり、限られた市場は既に寡占状態にある。
日本から来る人々は、既に自分の好みが確定している場合も多いし、駐在員の多いニューヨークやロサンゼルス以外の土地で宣伝をしても高い効果は望めない。
多くの日本酒の蔵元のように跡継ぎとなる人材や支部を米国に置き、現地のイベントに積極的に参加し、普及に努めている日本酒に対して、現状の焼酎メーカーは日系大手食品商社を通しての普及や日本語による宣伝に終始しているケースがほとんどで、これについてある関係者は「このままでは米国での焼酎の将来性はゼロに近い」と厳しい見方をしている。今後5年間の出荷量増加予測についても1〜3割と、日本酒に比べると米国への浸透についての見込みが薄い予想が聞かれる。
米国での焼酎市場を拡大するには、日本酒と同様、やはり米国人をメインターゲットにしていく必要がある。
しかしながら、この他にも米国市場での消費拡大にもいくつも課題が残る。まず、その類似品の多さである。
蒸留酒である焼酎に対して、同じ競争相手の蒸留酒としてウォッカ、ジン、テキーラウイスキーなどが既に米国市場には溢れている。
特にウォッカとの類似性は高く、「米や芋で作ったウォッカか」と珍しがらない米国人も多い。飲み方も水やジュース、お茶で割るケースが多く焼酎の酒としての特色が理解され難いのが現状である。芋焼酎の場合はその独特のクセが、白人に浸透するまで時間がかかるとの見方もある。
また、米国人の健康志向により、消費者全体の上記の蒸留酒のようなハードリカーを敬遠する傾向も焼酎の普及にとっては逆風となっている。
消費者の敬遠傾向に加え、多くの州でハードリカーはライセンス取得が日本酒やワインを含むソフトリカー類のライセンスに比べ、取得に時間と費用がかかるため、レストラン経営者からも敬遠される傾向にある。
米国でアルコール飲料を取り扱うためには、ライセンスを取得する必要があるが、アルコール度数の高い蒸留酒を取り扱えるハードリカー・ライセンスとワイン、日本酒、ビールなど醸造酒を取り扱うためのソフトリカー・ライセンスの2種類があり、カリフォルニア州をはじめ多くの州法では、費用もそれほどかからず比較的容易に取得できるソフトリカー・ライセンスに比べ、ハードリカー・ライセンスは地元住民の承諾を必要とし、取得費用もソフトリカー・ライセンスのそれに比べかなり高額で、多くのレストランではソフトリカー・ライセンスしか保持していない。
焼酎は蒸留酒であるため、取り扱いには通常ハードリカー・ライセンスの取得が必要となる州が多い。
カクテルによく使用されるテキーラウォッカはハードリカーとしての扱いになるが、その代用品として焼酎を使用してもらい、市場を拡大することも考えられる。
例えばテキーラは、米国人に非常に人気のあるカクテル「マルガリータ」の原料として最も多く使用されている。
米国でのマルガリータ人気は大変なものであり、イチゴ味やマンゴ味、フローズンタイプなどありとあらやる種類がバーのメニューに並び、市販もされている。
こうしてマルガリータを通じてテキーラに親しんだ人たちのおかげか、最近では高級テキーラも輸入され、ロックや生で楽しむ飲み方も一般化している。
蒸留酒である焼酎は日本でもウーロン茶割りやレモンフレーバーなど多くのジュース類で割って楽しむ人が多い。
そのため、まず焼酎カクテルからはじめ、焼酎という「日本の酒」を米国人へ浸透させていくのも一法であると考えられる。
米国でも認知度の高い韓国の「ソジュ」というお手本があるので、ソジュの普及法を踏襲していくのも一案だが、原料や製法が類似しているため、むしろ韓国の蒸留酒であるソジュとの差別化が必要であろう。
米国で嗜まれるアルコールの大半がビールやワインなどのソフトリカーであるという現実、最近のハードリカーの敬遠傾向、日系人を含む日本人数の減少傾向を踏まえ、今後の焼酎メーカーの米国進出への課題は大きい。

日本茶
日系食品関係者が、現在注目している日本食材の一つに日本茶がある。
緑茶は、一部の健康志向や本物志向の人をはじめ、米国も徐々に緑茶が評価されるようになってきた。
ロサンゼルスやニューヨークなどの都市部では、日本茶を扱うティーショップも登場している。
これらのティー専門店では中国茶や紅茶、ハーブティーと並べて日本茶もフレーバー付きや茶飲料の一つして並べられている。
甘いシロップを入れたり、ブルーベリーのフレーバーを加えたりした日本茶は日本人には想像しがたいが、「ヘルシーで美味しい」と米国人には人気が高い。
また、日本茶を提供する店には、日本食好きや健康志向で個人的に日本茶に興味を持った米国人オーナーが多いのも特徴である。
これも日本茶を新しく米国人の食生活に取り入れる有効な方法の一つであり、日本茶市場の拡大に貢献していると言える。
一方、日本食レストランの日本茶は、本来の日本茶の美味しさを伝えて行くために、また違った方法で日本茶を普及していく方法もあると考えられる。
米国にある日本食レストランの多くは、緑茶を無料で提供している。
また、緑茶の味や品質にこだわる米国人は少ないため、レストラン側は価格面で高くなる高級茶に関心はなく、安価な緑茶を使っているレストランが多い。
ただ、日本食ブームの成熟に伴い、一部の高級レストランでは緑茶を有料で提供するところも出始めており、今後、米国人の緑茶の味や品質への関心が高まれば、コーヒー等と同様に2-3ドル程度を出しても、高級緑茶を求めるようになる可能性はある。
日本茶普及の一案として、例えば色鮮やかな抹茶などは大手コーヒーショップでドリンクの一種に使用したり、デザートに使用されたりと日本茶の中でも先駆けて、いろいろな方法で提供されており、米国人にも比較的親しみがある。
例えば、その抹茶を利用したデザートを牽引力としてお茶に価値を作り、「日本食レストランのお茶=有料」の図式が定着すれば、緑茶や玄米茶、ほうじ茶など他の日本茶日本食レストランにおいて有料での提供がしやすくなるだろう。
3.ウェブサイトの重要性が拡大
レストラン予約サイトとして最大の『オープン•テーブル:www.OpenTable.com』には既に多くの日本食レストランが加盟している。
人数や時間、空いている日などがウェブサイトで手軽に分かり、その利便性から支持が高いサイトだ。
米国のトップクラスのレストランのほとんどは利用しているが、日本食レストランでのその導入比率は他の分野のレストランに比べ、まだまだ低いようだ。
レストランの売上げに大きく影響を与えているのは口コミサイトだ。
口コミサイトは、実際に客として訪れた人がその店についての感想を記しており、宣伝記事や広告などよりもその信憑性の高さが評価されている。
この口コミサイトとして大きな影響をもつのが『イェルプ:www.yelp.com』だ。
全米の地域別、また分野別で選べ、選択肢の中に日本食もある。
ここでの評価を確かめて訪れる人は多く、好評なコメントが多いと宣伝を打つよりも売上げ増加につながることもある。
一方、酷評を書かれたレストランは苦労を強いられているようである。
他のメジャーなレストラン用の口コミサイトとしては『チャウフンド:www.chowhund.chow.com』があり、食以外にもショッピングやアート、ナイトクラブなど全般的に取り扱うイェルプの比べ、食に興味のあるよりグルメな人が集まっている傾向にある。
今後の日本食レストランのマーケティングにあたっては、このようにウェブサイトの比重が大きくなるだろう
4.今後注目を集める日本食分野
日本食には様々な分野の料理が存在するが、今後米国で注目を集める日本食の分野は何であろうか。
既に米国人の日常生活に溶けこみだし、地元のスーパーで当たり前のように取り扱われている寿司に加え、ひそかにブームが起きて、注目されているのがラーメンである。
ニューヨークのラーメン事情には既に述べたが、ロサンゼルスでもラーメンは注目度の高い食べ物である。
ニューヨークと合わせ、東西両海岸に広がりつつあるラーメンは、不況の時代にも手軽に食べられる日本食として、米国に根付いて行く可能性を秘めている。
その他に注目されているのは居酒屋である。
日本でもカジュアルに入れる、低価格のレストランとして不況下にも強い居酒屋が、西海岸や東海岸で人気を集めている。
特に中国人や韓国人、台湾人などアジア系米国人に人気がある。
品数の多さ、一品当たりの価格帯が抑えられており、主に小皿料理なため、一度に様々な味が味わえること、手軽に流行の日本食を楽しめることなど、今後米国に「ジャパニーズ•タパス」として根付いていくのではないだろうか。
また、健康ブームに後押しされ、「マクロビオティック」のような日本発の食生活法を取り入れた分野も注目されている。
これらの健康を意識した食事方法は単に低カロリー・低脂肪という日本食全体に共通する特徴だけでなく、日本食材のさらに深い健康効果を活かした料理を提供しているのが特色である。
動物性食品を一切使わない料理は、ベジタリアンの食事としても受け入れられるため、ベジタリアンの顧客層にも広く人気がある。
Ⅴ.日本食レストランの経営の変化
1.米国における日本食レストランのレベル
1970年代より米国で寿司ブームがおこったが、その時期には生魚を食べる習慣がなかった米国の土地で、寿司の材料となる生魚を入手することすら困難だった。
その時代から40年近くが過ぎ、多くの日系食品商社や食品関係者の活躍により、今では全米各地で生魚が手に入る時代となった。
世界最大の魚市場、築地からの直送便で毎日新鮮な魚が届くだけでなく、日本全国の市場で取り引きされる旬の魚が、翌日には米国の日本食レストランで提供されている。
各種企業の貢献により、日本全国の魚市場に並ぶ第一級の魚を、日本で食べるのと変らぬ新鮮な状態で、米国で手に入れることが可能になっている。
寿司に欠かせないもう一つの材料である米についても、日系食品商社の活躍により、日本各地のブランド米をいつでも手に入れることが可能である。
しかし、米国の日本食レストランの大半で使用されているのは、価格の観点からカリフォルニア米を中心とする米国産がほとんどである。
日本から輸入した米を使用しているのは一般的に一部の高級日本食店で、大多数のレストランではカリフォルニア米など米国産が使用されている。
1997年から2007年の10年間で全体の米生産量のうち日本食レストランでの使用比率の高い短米種の米生産量全体に占める割合は10%以上も増加していることは、日本食レストランの増加とそこでの使用量の増加を物語っている。
日本からの輸入米に関しては、近年ロサンゼルスやニューヨークで、かまど炊きにして、付加価値を付け、ブランド米として提供しているレストランも見られる。
ブランド米として、米そのものの味の評価が広がるに従って、日本からのブランド米需要が増える可能性もあるが、これはまだ都市部のごく一部の話で、この需要拡大には時間がかかるものと思われる。
次に野菜についてであるが、寿司はともかく、本格的に日本料理を提供しようとすれば、現地の野菜だけではとてもまかなえない。
東海岸、西海岸ともに日本野菜の生産と販売を専門としている農場が存在する。
今では数件あるが両海岸の代表格ともいえる農場はともに1980年代初頭に設立され、ふき、みょうが、大葉、芽葱、京芋、百合根、ゆず、春菊、九条葱などが栽培されている。
両農場では、顧客の要望に沿って次々と取り扱う種類が増えているそうだ。
さらに、これらの農場の成功を受けて、日本野菜の生産に乗り出す近隣農場も多い。
ニューヨークの各地で行われているグリーンマーケットには小松菜、水菜、大根、かぶなどを提供している米国人や韓国人が経営する農場も多い。
このように、現在米国の日本食レストランが入手できる日本野菜は品種もレベルも日本に近づきつつある。
このように、米国の日本食レストランで入手できる日本食の食材のレベル向上は著しく、日本国内で手に入るもののほとんどは米国でも手に入れられるといっても過言ではない。
ただ、日本同様の食材が手に入れられるほど日本食材のレベルが向上しているからといって、米国で提供されている日本食が日本と同レベルというにはまだまだ課題が残る。
その主な理由として、食材レベルの向上に人材レベルの向上が追いついていないことがある。
一つには米国で合法的に滞在するためのビザ問題が大きい。十数年前には「スシシェフ」であれば簡単にグリーンカードが入手できる時代があった。
その時代が過ぎた後にも、スシシェフであれば、就労ビザが簡単に入手できた。このため、全く日本食の経験が無く、興味もない学生などが、米国での合法的な滞在権を手に入れるためにスシシェフになった例が多かった。
このような「にわかスシシェフ」や日本食料理人は日本でのシェフや寿司職人としての修行経験も持たず、厳しい日本食店や割烹で修行を積んで独立した日本食職人とは雲泥の差がある。
もちろん、日本から進出してきたレストランで、日本から派遣された職人のもとで学んだ日本食シェフもいることはいるが、この幸運を得たシェフは稀な例であろう。
日本食先進州のカリフォルニアのロサンゼルスでさえ、東京•銀座と同レベルの寿司が食べられるのかといえば、そうではない。
ただし、比較的古くから寿司文化が継承されてきたロサンゼルスでは、ある寿司職人の下で修行し、独立して店を持ち、成功店を作り上げ、その技術をまたその弟子に伝えていく、といった寿司職人の系統図が続いている店もある。
それとは別に、豊富なカリフォルニア産の素材を惜しげもなく用いた、とびきりネタの大きい寿司のようないわゆる「ロス前」寿司が育ちつつもあり、現地の米国人に浸透しつつある。
そして、米国から日本へ逆輸入された「カリフォルニア•ロール」やフュージョン料理などは素材レベルの向上によって、より洗練され、提供される日本食材の種類が豊富になるにつれ、よりバラエティに富んだ料理が生み出されている。
2.米国における日本食の地位向上
寿司はもちろん、日本食全般がフランス料理や中国料理に比較して、米国においてどの程度マーケットバリューを持つのか。
つまり、他国の食文化との比較の中で、どの位置を占めるのか。5年前と比較すると、日本食レストランの地位が確実になりつつあり、世界的に日本食の価値が認められ始めたと言っても過言ではない。
2009年版の『ザガット/ロサンゼルス』では上位100位のうち30店舗に日本食レストランが並んだ。
そのうえ、1位から4位まで日本食が占めている。
これは、もともと日本食レストランが最も多い南カリフォルニアで見られた結果で、全米の一般的な傾向ではないが、数年前にはまだ物珍しい料理の一分野として、日本食の要素を取り入れたフュージョン料理としてもてはやされていた日本料理の米国での地位が、急速に向上しているのはまぎれもない事実であると言える。
3.アジア系経営者の増加
日本食レストランの経営者も15年前に比べて様変わりしてきた。
全米の日本食レストランの経営者のうち、日本人以外の経営者(ノンジャパニーズ)が約8割と言われる4
それでは米国で日本食レストランを経営する「ノンジャパニーズ」とはどのような人々なのか。
日系食品商社や日本食レストラン業界の方々の話を総合すると、そのほとんどが、中国系、韓国系、台湾系、タイ系、インドシナ系、フィリピン系、インド系、カンボジア系、ベトナム系などの「アジア系」だと言うことになる。
このほか、人口急増のヒスパニック系も増加中で、ヒスパニック系は日本食レストランのキッチンで働いている半数以上を占めるといわれ、ヒスパニック系の人々がメキシコに帰国したら全米の日本食レストランが休業になるだろうと言われているほどである。
日本食レストランの軒数は増加傾向にあるが、日本人経営の店は、子供たちが継がない、後継者がいない、店舗を手放すとアジア系がビジネスチャンスを求めて買収、という流れから今後も比率はますます減少していくことは確実となっている。
なぜ、アジア系の経営者がこぞって日本食レストランを開くようになったか理由はいろいろ考えられる。
この背景には、米国におけるアジア系米国人の人口増加という大きな要因がある。
人口増加のほかに、アジア人の経営者が日本食レストランを開店する背景を以下に列挙する。
1. 日本食の調理方法は容易だと認識されており日本食レストランを開店するにのに調理技術の面でのハードルが低い(ロサンゼルス、ニューヨークでは、寿司ネタ、寿司飯、ガリ、玉子、味噌汁などできたものを買うことも可能。
日本食の基本メニューの作り方の本が、英語のほか、中国語、韓国語等でも入手可能であり、それを参照すれば日本の定食屋にあるようなメニュー(味噌汁、チキンカツ、豚肉生姜焼、サーモンの照焼など)であれば、それなりの料理を作ることが可能。
2. 回転寿司をはじめロールや握り寿司など機械が調理技術を補うようになったため、日本食店経営が益々容易になった。
3. 魚、寿司、豆腐、お茶などの保存食はアジアがルーツで類似の食品が多くあり、既に日本食材に親しみがある。
4. 日本食には比較的高級なイメージがあり単価を高く設定でききることから、利益率が高い。例えば、タイ、ベトナム、料理であればランチの焼きそば(麺類)に一皿8ドル付けられればいいほうだが、和食、寿司ランチメニューだと15ドルから20ドルの価格を付けても顧客に許容される。
5. 日本食にはそれほど強い火力が必要でないため、レストランの出店のための設備投資が少なくて済むので、レストランを始めようというアジア系の多くがテイクアウト店やカフェよりまずは利益率が高い日本食をやってみる傾向がある。
6. 日本では厳しい修行を積まなければ作れないと言われている寿司は、「生の魚を適当な大きさにスライスして寿司飯の上にのせて出せばいい」というように簡単に考える傾向がある。
7. 米国人の顧客に日本食を提供する者は、日本的外見をしているものの方が「日本食レストランらしい」ため、一般の米国人などよりもアジア系のほうが日本食ビジネスに参入しやすい。
2000〜 2050年まで、50年の人種別の人口予測を見ると2050年の米国におけるアジア系人口は2000年に比べ3倍以上の増加と予測されているが、これに含まれる日系米国人や日本人の人口割合はますます減少する傾向にある。
また、これが日本食レストランの経営者に日系以外のアジア系が増える背景となっているため、今後ますます日本人以外が経営する日本食レストランが増えると予想される。
(コラム)アジア系が経営する日本食レストラン最新事情
南カリフォルニアにおいて日本の文化や商品を中国語および韓国語で紹介する雑誌「J-goods」のプレジデントで、当地の中華系・韓国系マーケットの実情に精通している土橋八恵さんにアジア系経営の日本食レストランの最新事情を聞いた。
現在、南カリフォルニアにある日本食レストランの経営者は、60%〜80%が日本人以外、とりわけ中華系・韓国系の経営者だと言われている。
特に韓国系は人気の日本食店を探しては、頻繁に「売ってほしい」とアプローチするという。
また、中華系・韓国系のレストランで、寿司カウンターを備え、天ぷらをメニューに載せる店も多く、「日本食店」との分類には入らずとも「日本食」を提供している店は、増加し続けている。
2000年以降、急激な経済発展を遂げた中国大陸。
特に沿岸部に住む株や不動産で富を得た比較的若い層の中国人が力を入れるのが子供の留学。
米国は、最も人気の留学先だと聞く。
留学させた子供の名義でロサンゼルス郊外の新興住宅地に、新築の家を現金で購入し、次に「日本食レストランを買いたいので探してくれ」と言う。
それを足場に、多くの親族を米国に呼び寄せる大陸出身者も多いと、中華系不動産業者は語る。
なぜ、日本食レストランなのだろうか。
ある中華系起業家は、「日本食は調理の必要がない。
生魚を買ってきてそれを切り、醤油と山葵を添えて出すだけで、中華料理の5倍以上の値段を付けられる。
天ぷらも、ただ粉を付けて揚げるだけ。
しゃぶしゃぶに至っては、肉を薄く切る機械さえ買えば、あとはタレと一緒に出すだけで、調理は客が自らやってくれる。
さらに日本食は、すでに仮調理をしてある便利な素材が多い上に、ディストリビューターの販売網が整っていて、予算に応じた食材を簡単に仕入れることができる。
中国本土から腕の立つ料理人を呼び寄せ、常に他店と味を比較される中華料理に比べると、こんな楽な商売はない」と言う。
また、人種を問わない客層の広さも日本食の魅力だと付け加えた。
中華系が経営する日本食レストランは、客として日本人を対象としない傾向が強い。
場所も、中華系が多く住む地域を選び、そこで働く料理人は、中華系かヒスパニック系が務める。
彼らは、日本人以外の独自のマーケットを開拓することにより、さらなるビジネスチャンスを拡大している。
一方、韓国系は日本食レストランビジネスへの進出方法が、中華系とは少し異なる。
彼らは、日本人を対象に、日系の集積する地域での営業を好む。
そして、日本人の料理人を雇い、正真正銘本格的な日本食だと告知をする。
ここには、中華系と韓国系の気質の違いがあるようで面白い。
また、これまでは、日本人以外が経営する日本食店は、寿司をメインにした店が多かった。
しかし、ここにきて、寿司以外の日本食にも進出し始めているのが、最近の目立った動きだ。
ロサンゼルス郊外にある「Indian」は、台湾人経営の日本の居酒屋スタイルの店。
今は多少落ち着いているが、開店当時から2年ほどは、連日行列、待ち時間1時間以上の盛況ぶりだった。
焼き鳥、秋刀魚の塩焼きなど日本食を意識したメニューも並ぶ。
焼き鳥、しゃぶしゃぶ、たこ焼き、ラーメンなども、今彼らが注目するビジネススタイルで、さらには日本式のケーキやパンを売る店も出てきた。
先日、ある中華系起業家から「ラーメン屋を経営したい」との相談を受けた。
聞けば、中華系の多く住む地域で、日本人料理人を雇ってラーメン屋をやったら、絶対に儲かると考えていると言う。
ラーメンは、寿司に比べると、食材コストがかからない上に、人種を越えて、これからもっと人気の日本食になるはずだからと、言葉を続けた。
実際にロサンゼルス郊外では、「味千」、「Naganga」と言った、中華系経営のラーメン店が人気を博している。
ただこの両店には日本人の料理人はいない。
だからこそ、「日本人が作る正真正銘日本のラーメン」を唱えれば、商売として成功すると考えているようだ。
すでにこの地域に進出している日本人経営のラーメン店もいくつかあり、賑わっている。
中華系・韓国系は、日本食レストランビジネスを有望な商材と捉え、よく観察し、常にチャンスをうかがっているようだ。
一方、日本食レストランを、客として訪れる側はどのように見ているのか。
中華系富裕層の中には「日本人経営、日本人料理人の店」にこだわり、店選びの条件にしている人も多い。
しかし、日本人と一部の中華系富裕層を除けば、誰が経営しどんな人種が作っていようと気にせずに、「日本食」を楽しんでいるのが現状のようだ。
(以上)
4.米国の飲食業界からの資本参入
アジア系の経営者に加え、約10年前から米国の飲食業界のメジャー・プレイヤーたちが、日本食は利益率が高くトレンディなビジネスであると見なし、日本食レストラン業界に参入し始めた。
ロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミ、ラスベガスなどで米国人のプロのマネジメント・チームが資本やノウハウ、PR力を総動員して米国人の好みに合う、流行る日本食レストランを展開するようになってきた。
特に「アジアン・フュージョン・ウィズ・スシ・バー(Asian Fusion with Sushi Bar)」というコンセプトで、流行に敏感で自由になるお金を有する30代のヤング・エグゼクティブ層をターゲットにした店や日本人シェフと提携した料理と内装にこだわるエンターテイメント性の高いレストランが目立つ。
豊富な資金力からプロモーションやマーケティングにも優れ、次世代の日本食スターシェフを輩出しつつあるレストランもある。
この傾向は約10年前から始まり、約7〜8年前からは、これらのプロのマネジメント会社の投資額が大きくなり、個人経営のレベルで大都市に日本食レストランを開店して競合していくのが困難な状況も作り出している。
Ive reached the end of my talk.
Are there any questions?
Q1.
A1.
Q2.
A2.
Thank you.